衝撃的なタイトルに思わず手に取った本。
自分でも驚くほどのスピードで一気読みしてしまった。
東海村臨界事故で被曝して亡くなった作業員の方が
被曝してから亡くなるまでの実録。
NHKの取材班が取材の記録をまとめたものだ。
これだけの記録を公開するということに、
家族や医療関係者の方の並々ならぬ意志を感じる。
二度と同じことを繰り返してはならない。
生きるために頑張り続けた、なのに35歳という若さで亡くなった、
彼の死を無駄にしないために。
当初は話もできた大内さん。
すさまじい闘病の様子が描かれる。
闘病というか、放射能の人体を破壊する恐ろしい力が
脳裏に焼き付いていく感じだ。
大内さんの治療に携わってきた看護婦さんたちも、
大内さんであることすら分からなくなっていく、
自分が何のために処置をしているのか、
それさえ分からなくなるような葛藤の中で、
毎日治療を続けていた。
ある看護婦さんは、夢の中にも、苦しむ大内さんが登場し、
さらに、自分も病室で同じように被曝し、
そこに次から次へと被曝患者が運び込まれ、
自身が被曝でもだえ苦しみながら患者を看るという
悪夢でうなされたそうだ。
治療に従事するにも辛い状況で、その看護婦さんは、
入院直後のまだ話のできた大内さんが
(声を出すのは大変な体力がいったようだが)、
絞り出すような声で、奥さんに「愛してるよ」と言った、
その時の大内さんを懸命に思い浮かべて、治療に当たったという。
それほどに放射能の威力で変わり果てた姿になっていったのだという。
お医者さんたちも闘う。
決して、あきらめない。
必ず、助けるのだと。
様々な方法、様々な薬を試していく。
しかし、全てが手さぐり。
臨界事故の治療は初めて。
放射能が人体にどれだけの影響を与えるのか、未知すぎるのだ。
苦悩と無力感、そして必死な日々が続いていった。
家族も決してあきらめない。
毎日、奥さんや息子さん、ご両親、妹さんがやってくる。
もう、触るところもなくなってしまいましたね。
とこぼしながら。
細胞がボロボロにやられ、体中の皮膚から水がしみ出し、
胃腸も破壊されて大量の下痢が続き、
血液の循環もストップ。
あまりの放射能の破壊力に、言葉を失った。

そして、83日目。
関係者も予期しないほどの突然の血圧低下により、
家族が駆けつける間もなく亡くなってしまったという。
当直だった看護婦さんは茫然と立ちすくむしかなかった。
医師たちも涙でむせんだ。
非番でテレビのニュースで、亡くなったことを知った
看護婦さんたちは、みんな、
「もう苦しまないですむね。よく頑張ったね」
と号泣したという。
タクシーに飛び乗って病院まで駆けつけた医師もいた。
業務上過失致死罪に立件される事故としても司法解剖が必要。
最期に立ち会えなかった分、解剖には立ち会いたかったのだという。
臓器がとてつもない状況になっていたようだ。
医師たちが見たことのない想像を絶する状況。
腸は大蛇がのた打ち回ったようになっており、
血液がたまっていた(血液がまったく循環されてなかった)。
しかし、心臓は、綺麗だったという。
解剖に携わった医師は、無念に亡くなった患者の声を聞くのが仕事
だと言っていたが、
大内さんの心臓から、あれほど苦しんでも、生きたかったんだ、
という強いものを感じたという。
解剖が終わり、霊安室に遺体を運び込む際、
医師たち全てが泣いていたという。
その一方で、もう1人被曝した作業員が闘っていた。
奥さんは同僚の大内さんの死を告げることができず、
少し経ってからお兄さんが話したそうだ。
「おれも、大内みたいに死ぬのかな…恐いな」
とつぶやく夫に、奥さんは、
「よくなったら、一緒に大内さんの処へお線香をあげにいこうね」
と励ましたという。
しかし、彼もまた、40歳の若さで旅立った。
司法解剖。
ザクッ、ザクッ、
皮膚を切る音が、今までに聞いたことのない音だったと
医師は振り返った。
私がこの本を読んで感じたのは、人々の愛だ。
もちろん、放射能の破壊力に言葉を失い、
ゾクゾクと寒気がした。
しかし、それ以上に、人間のあったかい心に感じ入った。
無念にも亡くなったご本人たちの愛。
支え続け、今も亡くなった彼らを想い続ける家族の愛。
医療に携わった看護婦さんと医師たちの愛。
機械的に治療するのではなく、大内さんの傍で、
自分たちも一緒になって懸命に向き合い闘った、
彼らの83日間の治療や思いから、
あふれんばかりの愛情が感じとれた。
彼ら自身、大内さんが亡くなってから、
患者さんへの接し方が変わったという。
ある看護婦さんは、これまで黙々と医師の指示に従うだけだったが、
患者さん側に寄り添うようになったという。
医師の方針に異論を唱えるなど考えられなかったのが、
患者さんが辛い、苦しいと言えば、自らが代わって、声をあげて、
医師に伝えるようになった。
携わった全ての人の中に、大内さんが生きている、
そんな気がした。
そして、読み終わって、思うこと。
ノーモア広島、ノーモア原発、ノーモア臨界事故。
放射能の恐怖が二度と襲ってこないように。
目の前の放射能の恐怖から解放されるように。
放射能の恐ろしさを身をもって伝えてくれた2つの命を
決して無駄にしてはならない。
本のタイトルに 「朽ちていった命」とつけた勇気。
83日間の記録、恐怖を呼び起こすような目次に連なるタイトル。
被曝 一九九九年九月三〇日/邂逅-被曝二日目/転院-被曝三日目/
被曝治療チーム結成-被曝五日目/造血幹細胞移植-被曝七日目/
人工呼吸管理開始-被曝一一日目/妹の細胞は…-被曝一八日目/
次々と起きる放射線障害-被曝二七日目/小さな希望-被曝五〇日目/
被曝五九日目/……(中略)……/被曝八十三日目…
ぜひ、読んで欲しい。
そして、懸命に闘い抜いた大内さんら作業員お二人のことを想い、
忘れずに脳裏に刻んで欲しい。




































